I told sunset about you 感想③(第5話)と2期に向けての雑感

やっと辿り着いた最終回。
いや、自分で勝手に長々と書いているだけなんですが。

以下いつもの通りネタバレしかしておりませんのでご了承ください。

感想その①↓

https://yoshinashitan.hatenadiary.jp/entry/2021/05/14/220934

感想その②↓

https://yoshinashitan.hatenadiary.jp/entry/2021/05/20/232356
















5話は受験勉強に取り組んでいるTehとOhの姿から始まります。
真剣に机に向かってはいるのですが、Tehは勉強が一区切りついたのかスマホを手に取ります。そしてOhとのラインのトーク履歴をじっと見つめ、そして全削除します。
それがかえってTehが今でもOhへの思いを断ち切れていないことを強調します。

その直後彼らのグループラインは、中国語塾の受験に向けての壮行会とお別れ会を兼ねた催しの話で盛り上がります。

迎えた当日。
久しぶりに顔を合わせたTehとOh。
でもその視線が交わることはなく。
OhはBasと隣に座り見つめ合い手を取り合い、もう恋人同士と言っても誰も疑わない仲睦まじさ。
それを目の当たりにして複雑な心境のTeh。

今日のこの会の最大の目玉は先生からの提案で、仲間から仲間への感謝の気持を述べエールを送ること。

Tehは当然Ohには何も言えない。いつもの友人グループの一人を選びました。

そしてOhの番。彼はこれまたごく当たり前のようにBasへの感謝を述べます。

直後Basは言葉をくれたその同じ相手に言ってもいいですか、と先生に尋ねOhに向けて話し始めます。

いつも控え目で穏やかなBasの渾身の告白。
率直で端整で素晴らしかった!人生で一度くらいこんなふうに愛を告げてもらいたかった!と思うほど。

最初は他の生徒たち同様仲の良い友人への感謝と激励の言葉。

続けて
「どうして僕(一人称は俺かもしれませんがあくまで個人的イメージで僕にしますね)が、毎日君を車で送り迎えしているかわかる?」
と語りかけます。

そしてちょっと居住まいを正し、
「それは僕が君のことを好きだからだ」
と告白します。

Basの話は続きます。

高校入学当時友達がいなかった自分にOhが一番に話しかけてくれたこと、その後も昼食を誘ってくれたりなどそのお陰で友達ができたこと、自分のように内向的な人間にとってはこれまでなかったことだけれど、君は僕の中で一番の存在になって、僕は君の一番の親友になりたいと思った。

それを聞いているOhの目に涙が浮かんできます。
一方Tehの視線は泳ぎ、激しく動揺していることが隠せません。

そんな中Basは話し続けます。
時間が経つにつれ、Ohへの思いがいよいよ募りその気持ちが友情ではなく恋ではないか、と混乱したこと。

しかし、Basは少し緊張しながらもきっぱりと言います。
「君が悲しんでいるとき、僕は確信したんだ、自分で想像していたのよりずっと僕は君のことを思っているって」

「僕は内気なので、君への気持ちを表には出せなかったけれど、君への気持ちを恥ずかしいと思ったことはない」 
「どうか僕に心を開いてほしい」

これらの魂が込められた言葉はナイフのようにTehの心をズタズタに引き裂いたでしょう。
Ohを悲しませたのは自分。
Basはそんな彼を見て、自分自身に真剣に向き合い気持ちを打ち明けた。
Tehがどうしてもできなかったことを目の前でされてしまった。
なりたかった自分。そうなれたかもしれない自分。
あまりことに涙が止まらないTeh。

いえ、この痛みは彼の欺瞞や一種の傲慢が招いたものではありますが。

個人的に長女の相当過酷な大学受験を傍で見ていた経験からすると
「受験前にはやめてあげて!」
という気持ちではありました(笑)


そんな状況の中迎えた受験当日。上手くいく気がまるでしません。

TehとOhが受験会場の教室に入る直前に爆竹の音がけたたましく鳴り響きます。
思わず耳を塞ぎ身を屈める二人。
それはかつて中学の合格発表の掲示板の前で、TehとOhが初めて出会ったときと同じ状況でした。

気がつけば周囲から人影は消え、二人だけになっていて本当に久しぶりに彼らは言葉を交わします。
最初は遠慮がちにでも穏やかにお互いの健闘を祈るのですが、ここでまたTehは間違えてしまいます。
もう何やっても裏目に出るな、Teh(溜息)。
彼は聞いてしまうのです。
「Basとはどう?」
と。あの壮行会以来、Tehの頭はそのことでいっぱいだったのでしょう。でもね、今じゃない。
僅かに揺らぐ視線がOhの戸惑いを伝えます。
「ちょっと前から付き合い始めたよ」
「彼のことをもっとよく知ろうとしているよ」
そして先に試験会場に向かったOhが視界から消えるとTehは泣き出してしまいます。

「もっとよく知ろうとしている」このOhの言葉であくまで相手の好意に応えようとしているのだ、もっと言えばそれだけなんだ、ということがわかるんですが。そんな余裕はこの時のTehにはない。

案の定泣きながら答案用紙に向かい、途中退席し(同じ教室の受験生のみなさん、本当にごめんなさいという気持ち)、それでも何とか最後まで受けたものの試験の結果は当然のように芳しいものではありませんでした。

真実の自分から逃げ続けたTehに本当に容赦がない。試練は続きます。

一方受験を終えたOhとBasは晴れやかです。旧市街を歩きながら翌日デートをする約束をします。とても嬉しそうなBasはごく自然にOhの手を取りますが、Ohは驚いて一旦は手を離し、周囲を落ち着きなく見回しBasに
「恥ずかしくないの?」
と尋ねます。でもBasは、どうして、なんで恥ずかしがらなくてはいけないんだと平然としています。
その様子を見て感激したOh。でもね、あくまで感激なんですよね。多分常に人目を気にしてついついOhのことを蔑ろにしがちだったTehと比べていたような気がします。

再び手を繋いで二人は歩き出しました。淡く柔らかな夕日に照らされる街並が、彼らがこれからも道を共にすればこんな穏やかな時間が待っているよ、と知らせるかのように。


そうして試験が終わった日の夜、明らかに沈んだ様子のTehに兄のHoonが静かに話しかけます。ベランダの椅子に並んで座る兄弟。

「何があった?失恋でもしたか?Tarnに?」
小さく首を横に振るTeh。
「じゃあ Oh-aew?」
すると堰を切ったようにTehが泣き崩れます。
ここからがBasの告白に次ぐ最終回の名場面の一つ。 
「俺はOhが好きだ」
ここで初めてTehははっきりと言います。
でも俺も男だし、あいつも男だ。これまで自分はずっと女の子が好きだったし、友達はみんな女の子と付き合っている、HoonがNozomiを連れてきたとき母さんはとても幸せそうで、誇らしげだった。
そんな彼女がもし自分が男性を好きだと知ったら?受け入れられる?

するとHoonは言います。終始優しい眼差しでTehを見つめながら静かな声で。
「お前が男性を好きでも俺はかまわないよ」
「もし母さんが男性を付き合うことを受け入れてくれたらお前は幸運だ」
「もし受け入れてくれなくても驚くことはない、時間をあげるんだ」
「それにお前が好きでもない人と付き合ったら、お前は幸せじゃないし母さんもそうだ」
「お前の人生だ。幸せになってほしい」
そして少しおどけた口調で
「Ohはお前のことを好きだと思うよ」
一層激しく泣き出すTeh。
「遅すぎるんだ!あいつはもう他の人を好きなんだ」
「まるで泣き虫の赤ん坊だな」
慈愛の塊のような兄は優しく弟の肩を抱くのでした。

このHoonの言葉。
あるブログでも書かれていたのですが、こんなにいい意味でとても現実的で、なおかつ誰も否定しない形を見せてくれたことに感嘆する他ありませんでした。


場面変わって受験を終え、合格発表を控えているとはいえ開放感にあふれているOhとBasと友人たちは春節の御祝いのパーティー会場にいます。
当然のように並んで座り手を取り合っている二人。

しかしTehの姿は見当たりません。友人の一人が「Tehは試験の出来がよくなかったらしい」と言うのを耳にしたOhは明らかに顔が曇ります。

そこへチャイナ服を着たピアニストが曲を奏で始めます。

それはかつて夕闇が夜へ変わるその時に、岬でOhが口ずさみ、Tehが一節ずつ訳していったあの曲。

それを聴くOhの目から涙が次々と零れます。

同じ時、会場の片隅の物陰で誰にも気付かれずそれを聴いているTehの姿が。
彼も頭を膝に押し付けるようにして咽び泣きます。

二人はお互いへの今でも思いを心に秘め、それは朝露に濡れる草花のように降り積もっているのでしょう。じれったいやら、切ないやら。

また春節なのでパーティー会場全体がお祝いの色赤がふんだんにあしらわれていて、またTehが着ているのも黒地に花柄のシャツ。
Tehの象徴の青は入り込むすきはないというのでしょうか。



そしてとうとう迎えた合格発表日。
そう、今どきは各大学のサイトにアクセスするんですよね。
娘たちのときのことを思い出して懐かしくなりました。
合格を知らせる画面を見て大騒ぎしましたもんね(笑)

友人たちがグループラインに次々と喜びの報告をする中、母親と二人ネットで結果を確認したTehは浮かない顔。そう、彼は第一志望の大学は不合格。第二志望に合格します。そしてTehに中国語を教えてもらっていたOhはTehの第一志望に合格。

Tehに降りかかり続ける負の連鎖。

合格発表の夜、Basの運転する車に乗っているOhは、Basがいろいろ話しかけても浮かない顔でほとんど聞こえていないようです。
そんな彼を見てBasはTehの食堂の前に車を停めます。驚くOh。そんな彼にBasはTehに会いに行け、と言います。今はTehが一番会いたいのは君のはずだ、と。

そして車を降りて店の前に行ったものの中に入ることができないOhは、道の向かい側で待ってくれていたBasに抱きつきます。

「Tehが悲しむのを見たくないんだ、ごめんBas」
「わかるよ、大丈夫。今日は無理でもまたしばらくしたら彼のところに来ることができるよ」
静かに励ますBas。泣きながら抱き合う二人。

同じ頃、自室で疲れたように寝そべっているTehのところへTarnが訪ねてきます。

彼女も見事第一志望に合格しました。

ネットの発表で朗報を知った瞬間大声で叫び、父親に抱きつく様子がとても微笑ましかったです。

またこの合格を知ったのが自宅の庭の芝生に敷いた紫の布の上だったこと、つまりTehの心変わりを確信し、嘆き憤ったあの日と同じ状況だったのです。
この時Tarnの辛い記憶が上書きされ、Tehへの気持ちにけりがつけられたのかな、と。

そんなTarnは柔らかな淡い紫色の服でTehに会いに来ました。
この色合いが彼女の苦悩の末にたどり着いた優しく凪いだ心の内を表しているようでした。

そしてここから相互フォロワーさんも一番好きだとおっしゃる場面となります。

なぜ来たの?と問うTehにTarnはあなたが心配だったからと答えます。
静かに大丈夫、何とか生きているよ、合格おめでとう、と言うTeh。

あなたも試験に通ったでしょう。それにどうしても第一志望の大学に行きたいのなら来年また挑戦すればいい、あなたにできないことなんてないし、あなたみたいな人がいつまでもへこたれたままなわけないでしょう。

そしてTarnは自分が描いた中華オペラの登場人物に扮したTehの肖像画を手渡します。
「君みたいな友達を持てたことは(自分にとって)贈り物だ」
二人は優しく抱き合います。
少しずつTehの顔が明るくなってきます。

話はいよいよ核心へ。
大学に入ったら二人の仲をはっきりさせよう、と言っていたTehとTarn。

ずっと本当に君のことが好きだった、二年間も口説き続けたんだし。
でも今はもう前のような気持ちを君には持てない、それでも喧嘩して君を失いたくなかった、君とは友達でいたい。
 
Tehの言葉を聞いているTarnは穏やかな笑みを湛えながらも涙が溢れてきます。

聡明な彼女はとっくにTehがOhを、Ohだけを愛していることを知っていた、でもその真実を見ないふりをしてTehとの仲をうやむやにしたくなかった。Tarnの覚悟と強さと健気さが伝わってきて実はこの作品中一番泣いたのはここでした。

泣きながらも彼女もきちんと告げます。
「私も今でもあなたと友だちでいたい」
と。

続けてOhはどうしているの?と尋ねます。
Tehが彼とは話をしていない、(第一志望)に合格したのを知ってからは、と言うとTarnは
「Ohにお祝いを言うんだったら自分で(直接)言うのよ」
とまるで弟に言い聞かせるような口調。
「何があっても私はあなたのそばにいるし、決してあなたを見捨てたりしない」
Tarn役のSmileちゃんの演技が絶品でした。台詞回しだけではなく、台詞と台詞の間、Tehを見つめる眼差しの色合いの変化、涙、どれもが非の打ち所がなかった!上質な魂の発露。とてもとても綺麗でした。


そして物語はいよいよ最終章へ。

それは大学の制服姿のOhがTehの食堂を訪ねてくるところから。

Tehには会わず、彼の母親に「これから(二人がかつて約束した)岬に走って向かう」と告げます。

すると程なくしてサイドカーをつけたお馴染みのバイクでTehが追いかけてきます。
二人が事ある毎にお参りしていたお寺の前にバイクを停め、サイドカーに積んだココナツを何個もOhのリュックに詰めるTeh。
いつの間にかかつての二人の様子に戻っていきます。

ここから流れるBillkinくんが歌うアカペラの主題歌SkyLineが胸に迫ります。
あの日の約束を果たそうと懸命に岬まで走る二人。でも辿り着いたときには曇っていて太陽は見えない。

それでも諦めきれないTehはOhに遠くに見える岬の先端まで行こう、と誘い二人は向かいます。

いよいよ目的の場所に辿り着こうとしたとき、雲の合間から太陽が顔を出し、辺りが夕日に包まれます。顔を上げ、両手を広げその日差しを全身で受け止める二人。
そしてどちらともなく向き合う格好となり話し始めます。

まず互いの受験のこと。
TehがOhにおめでとう、と言うと本当だったらこの制服を着ていたのはお前だったのに、と悲しげなOh。
でもTehはどこでだって勉強はできるし、夢を持ち続けることができる、と晴れやかに答えます。自信に溢れ、ちょっと悪戯っぽいいつもの表情を取り戻したTeh。

そして
Basとは友達に戻った、とOh
同じくTarnとも友達に戻った、とTeh。
「じゃあお前と俺は?」
問いかけるOh。それに対して何も言わないTehに
「わかってるよ」
とOh。続けて
「お前が友達でもライバルでも、俺を嫌いでも構わない、そんなことは重要じゃない」
「でも一つだけお願いさせて。二度とこんなふうに目の前からいなくならないでくれ」
彼の大きな目から流れる涙。
きっとOhはまだTehは女性が好きなのだ、と思っているんでしょうね。
そんな彼にTehも泣きながら、それでもこの上なく優しい声音で言います。
「俺をお前の恋人にしてくれない?」
お互い縋り付くように抱き合う二人を淡い夕日とそれを受けて煌めく広い海が見守っていました。
そして「愛」の文字が見開き二頁にぎっしり書かれたノートが映し出されました。

と、ここで終わりと思いきや、場面は変わりプーケットの潮の香りも届きそうにないバンコクにいる大学の制服姿のTehとOhを写し、最終話は幕を閉じました。


最後の最後で自分を見つめ直し、その心の求めるところを認めたTehがやっと夕日に許され祝福を受けたようでした。

自分から逃げさえしなければ、HoonやTarnのように大切な示唆や救いを与えてくれる存在に気づけるんですね。

また、BasとOh、TehとTarnのつながりはある意味人と人のつながりの最も崇高な境地かもしれません。
見返りを求めることなくいつでもそばにいるよ、と言える関係。

それは一見特別で手の届かないものにも映ります。しかし、特にTarnの悲しみ、怒り、葛藤、受容への変遷を彼女の象徴の紫色を介して描いてくれたことにより、誰にでも弱さや愚かさなども含め自分に真摯に向き合えば、容易ではないけれどもこういった関係を結ぶ機会はあるんだよ、示してくれたように思いました。

それにしても生まれ育った地を後にする二人の未来を考えると、晴れやかなような寂しいような。

この作品がこれほどの輝きを放ったのは間違いなくプーケットが舞台だったから。

時が止まったようで、それでいて活気のある美しい旧市街地。
人気のない砂浜。 
南国特有の湿った熱を孕んだ空気はほのかに気怠く時に官能的で。
何より少し抑えめの色彩が何故かたまらなくノスタルジック。

街のざわめき、波の音、それらはTehとOhの心情により、子守歌だったり、小夜曲だったり、哀歌だったりと姿を変えて。

またプーケットが中国文化の影響を色濃く受け継いでいることもあり、かつての中国の街並みが再現されているようで、ここが「今」というときからも、タイという国からもどこか遠くにあるような雰囲気がありました。
生活感と幻想が絶妙に配合されているとでも言いましょうか。

そんな中お互いに傷つけ、各々足掻きそれでも育んだ二人の愛の行方を見届けないではいられません。
どんな形でもいいから唯一の自分を大切に幸せになってほしいです。



〜さて、ここからは目前に迫った2期
'I promised you the moon'についてつらつらと〜

この2期のテーマは成長。
バンコクという大都会でTehとOhにどんな出会いがあり、どんな経験をし、二人の関係性がどう変化していくのか。

できればあの日の明け方、海辺でお互いの耳に飾った赤いハイビスカスの花は心の中でいつまでも枯れずにいてほしいのだけれど。

そんな感傷はきっと置いてけぼりにされるんだろうな。だってNadaoだしBKPPだし。

2期を観るのが待ちきれないような怖いような。(笑)
だって皆さん(いきなり語りかけるし、笑)ご覧になりましたでしょう。
'Last twilight in Phuket'

あんなの観せられたらねえ、多少気持ちの行き先が迷子になっても仕方ないじゃあございませんか。
いやホント1期をリアタイなさってた皆様には尊敬の念しかございません。一ヶ月以上も嵐の中の小舟状態でいらしたんでしょうね。

聞いたところによりますと、5話で大学時代の4年間を描くらしいですし。尺が足りないよーというITSAY 民の呻き声(失礼)が聞こえてきそう。いえ、かのチームを信頼していないわけじゃないんですよ!

何だかとりとめがありませんが、誰とはなしに何にでもなく祈るような気持ちで2期を待ちたい所存です。