花束の次は君
企画24作目にして最終日🎄
意外とそこまで悩まず毎日書けました。
とても楽しかったです。
企画してくださったたまこさんに心から感謝いたします。
FUTSアドベントカレンダー
ディナーを堪能して浮き立つような、少し気恥ずかしいようなシャンパンをいささか飲みすぎただけではない自分が自分ではないような感覚、
でもそれは決して不安なものではなく、
例え自分が風船のように飛んでいきそうになっても
傍らを歩く飽きもせず世の中の幸せを独り占めしたような顔の恋人が
きっとしっかりつかまえてくれる安心感があるからこそ。
今年もホテルの高層階の大きな窓の眼下に広がる夜景の壮大な瞬きに目が眩みながらも、ここから始まるいわば真骨頂と言うべき二人きりの時間に甘い疼きを宿しながらシャワーを浴びて部屋に戻ると。
ついさっきまではなかったはずの花束がベッドに置いてある。
九本の白い薔薇と淡い黄色のクリスマスローズ。
シンプルだけれど聖夜にお似合いの清楚な美しさを湛えている。
不意をつかれしばし発する言葉を見失っているPiに、先にシャワーを済ませたMorkがダンスに誘うように片手を差し伸べる。
「いつの間に?」
目を閉じたら消えてしまいそうで瞬きをためらいながら花を凝視しながらPiが尋ねると
「予め部屋のクローゼットに入れておいてもらうようホテルに頼んでた」
Morkは手品のタネを明かした。
「花なんてなくてもPiは充分可愛いけど」
「今夜はPiにやっぱり贈りたくて」
「いや、それにしたってこんな上品なの俺のイメージじゃないだろ」
「えーまさにPiそのものなんだけど」
至極真面目な顔でMorkが言うものだからPiは
「よく言うよ」
とケラケラ笑った。
その直後訪れたしじま。
ベッドに並んで座っていた二人は軽く唇を合わせる。
それからPiは高価な骨董品でも扱うかのような注意深い手つきでMorkの気障な、でも深い愛の象徴をサイドテーブルに移動させた。
改めてMorkの隣に来るとPiはバスローブの隙間にそっと手を差し入れMorkの鎖骨を指でなぞりながら
「で、この花束に意味はあるのか?」
と吐息混じりに尋ねる。
その熱を感じて
「これから教えてやるよ」
と答えたMorkの声に隠しきれない渇望が滲む。
「へーそんな余裕があるかな」
とPiの挑発的な言葉が合図となり、先ほどまで花が彩っていたシーツの上に二人の体が境界を曖昧にしながらもつれ重なっていった。
ところでーーー
「永遠に一緒にいたい」
「追憶」
やはりMorkの思いはずっと持ち重りするままのようだ。