いつか君とあの子と星の下
たまこさんが提案してくださった
「FUTSアドベンドカレンダー」
の11作目になります。
ずっとtwitterに直接Upしていたのですが、今回は↓のお話の後日談のような感じですのでこちらにしました。
「魔法のランプの有効期限」
https://yoshinashitan.hatenadiary.jp/entry/2022/06/03/170952
「星のない夜の一行」
https://yoshinashitan.hatenadiary.jp/entry/2022/06/21/224803
12月に入って最初の二人そろっての休日。
MorkとPiは部屋をクリスマス仕様に変えるべく作業していた。
と言ってもツリーを出してきてオーナメントを飾りつけるのが主で、後は壁に飾っている写真を昨年までのシーズン中に撮ったものに差し替えるくらいだ。
「うん、いい感じだな」
少し離れたところからツリーを眺めながらMorkはPiに言った、のだがさっきまでそばにいたはずのPiの姿が見当たらない。
「Pi、どこにいる?」
少しだけ声を張ってMorkが呼びかけると
「こっちだよ」
と寝室から返事が聞こえた。
「何してるんだ?」
と言いながら部屋に入ったMorkは途端に顔が綻ぶのを自分でも感じた。
「この子も今年はクリスマスモードにしてやろうと思ってさ」
いつもベッドサイドテーブルの上で二人のあれやこれや!を見守っているくまのぬいぐるみをベッドに座ったPiが掲げる。
数年前、Morkが約半年間北部の僻地医療の仕事をしていたときに、Piの代わりに寄り添っていてくれた子だ。
いつもはアラビア風の青い衣装なのだが、今は赤に白の縁取りのニットセーターを着ている。
「そういえばこの間買ってきたとか話してたな」
隣に座りながらMorkが言うと
「ぬいぐるみ専門の店とかちょっと恥ずかしかったけどな」
困ったようなでもとても嬉しそうな顔でPiが答える。
「あ、帽子も買ってきたんだ」
とPiがMorkに手渡す。
「Morkが被せてよ」
目を輝かせるPi。
そんな彼へ募る愛しさをふわふわの茶色の頭に、これまた洋服と同素材のサンタ帽子を被せる丁寧な手つきに込める。
「うん、なかなかいいな」
前後から姿を確かめご満悦のPi。
だがそのうち遠くを見遣るような表情になる。
機嫌が悪いとかではなさそうだが、
「どうした?」
Morkがそっと尋ねると
「いや、いつかこの子とお前が働いていたあの町にまた行きたいなって」
「イブにあそこの星を見れたら素敵だろ」
たった一度だけMorkのもとを訪れたPiは、あいにくの雨でかの町の有名な圧巻の星空を見られなかったことを時折残念がっている。
その口調は決して寂しそうだったり悲しそうだったわけじゃない。
だがPiの言葉はMorkを何だか泣きたいような気持ちにさせた。
それはPiの未来には当然のように自分がいる、と同義語だったからだろう。
「いつかきっとな」
強い祈りを込めて、でも軽快にMorkが言うとPiは
「お前は見てるんだもんな、ずるいぞ」
とMorkにわざと渋面をつくり
「ま、お前もまた見たいか、うん、いつか行こう」
次は膝に乗せたくまに話しかけ、Morkに向き直る。
そのPiの笑顔は、控えめなのに胸の深いところまで確かに流れ込む星明かりそのものだった